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なぜ、外国語が大学入試にあるのだろうか。気になったことはありませんか?
そもそも、なぜ外国語が必要なんでしょうか。明治時代にさかのぼって考えてみましょう。
明治初期、日本は西洋の文化を取りいれて、海外の列強に負けないように、急速に富国強兵
を進めてきました。その一環として、国民の教育を高め、かつ科学技術を発展させるために
さまざまな教育法令を定めました。しかし、教育法令を定めても指導できる教員がほとんど
いないという事態に陥りました。なぜなら、日本はそれまで鎖国をしており、イギリスやドイツ
などのヨーロッパの列強に比べて高等教育の環境が全くといっていいほど整っていなかった
からです。寺子屋のような初等教育の環境はとても整っていたのですが、高等教育となると、
教員の能力も求められますし、当時の日本にはそれだけの余裕がありませんでした。
自分の国だけで高等教育機関を作る余裕はなかったので、明治政府はヨーロッパなどから、
破格の給料で教員を雇いました。もちろん、教科書や教員の講義は外国語です。
したがって、学生はドイツ語をはじめ、英語やフランス語の学習をする必要がありました。
当時には日本の教科書なんて作る余裕がありません。だから、外国の教科書を使って講義
をしていました。講義に外国語が必要なので、入学試験でも外国語を課すのは当然です。
高等教育で外国語が必要なので、中等教育でも外国語の需要が高まっていきました。
それから数十年が経ち、1920年に大学令が発令される頃には、高等教育を
指導できる教員も少しずつ増えてきました。少しずつですが、日本語で高等教育を受ける
環境が整ってきました。
現在ではほとんどの講義を日本語で受けることができます。外国語を使わないといけない
ような講義は今では珍しいぐらいです。これは、私たちのご先祖さまのおかげであり、
私たちは感謝しなければなりません。さて、タイトルの答えですが、昔からの名残である
というのが答えです。たしかに昔は外国語ができないと死活問題でしたが、現在はそうでは
ありません。しかし、昔からの流れで、現在でも外国語を入試に課しています。
また、現在でも第二外国語を必修科目とする大学も多くありますが、それも昔からの名残です。
先日、アフリカにあるリベリア大学が、25000人の受験者で
合格者が0人(仕方なしに合格基準を下げた)というニュースがありました。
リベリア大学の広報担当者は「英語ができない人が多い」と言っていました。
これは昔の日本と同じ状況なのです。高等教育が普及していない状態で高等教育を
受けるためには外国語が必要です。しかし、その外国語を学ぶための中等教育が
まだまだ未熟なのでしょう。
用語の説明:
初等教育:小学校のこと。
中等教育:中学校および高校のこと。
高等教育:大学や専門学校のこと。
旧制高等学校:現在の大学1〜2年次に該当する。
旧制中学校:現在の中学校および高校に該当する。
旧制大学:現在の大学のこと。一流大学が多い傾向にあります。
旧制専門学校:現在の大学のこと。現在の専門学校とは意味が異なります。