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最初に問題を1つ出してみましょう。人口100万人の市の都市圏は人口10万人都市圏の10倍規模が大きいといえるでしょうか?
おそらく、「人口が10倍違うから100万人のほうが10倍大きい!」
と答える人が多いと思います。しかし、そうはいえない例をあげてみましょう。
図1. A市(10万人)とB市
先ほどの問題の10万人の市をA市、100万人の市をB市とします。左の図では周囲の市の人口密度が低く、中心の90万人の市は人口も人口密度
も高いので、市の中心は真ん中にあると予想されます。A市はこの中心に近い場所の市なので、このA市もこれらの市の都市圏の一部である
ことは明らかです。一方、B市の場合市=島ですから、都市圏は100万人を超えることはありません。つまり、行政上の市の人口と都市圏人口
は一致しないのです。念のために人口密度の説明をしますが、人口密度は人口を面積(km^2)で割ったものです。つまり、人口90万人の市は
面積も狭いうえに人口も多いので、この図の中ではもっとも人口密度が高いことがわかります。(A市も同じぐらい人口密度が高い)
雇用都市圏の定義は以下のとおりです。
雇用都市圏には中心となる都市と郊外となる都市が存在する。
中心都市の定義はAまたはBをみたすものです。
A:人口集中地区の人口が1万人以上かつ他都市の郊外ではない。
B:昼間の人口が夜より高く、人口集中地区の人口が中心都市の1/3以上または10万人以上である。
一方、郊外都市の定義は以下のとおりです。
中心都市への通勤率が10%以上である。(本当はもっと複雑な設定になっていますが、便宜上これだけで考えてみましょう)
では、先ほどの図を考えてみましょう。左の図では、90万人の市は人口密度が高いですが、人口10万人の市も同じぐらい人口密度が高く、
この市から離れるほど人口密度が低くなっていますので、中心地区は90万人の市のA市寄りか、A市であると考えられます。
つまりA市を核とする都市圏はA市だけでなくその周囲も巻きこんだ大都市圏となっているのです。
本講義では、前半に都市圏の理論や性質について解説したあと、実際の市についても考察していこうと考えています。
また、なぜ市の人口と都市圏の規模が乖離していったのかという歴史についても言及したいと思います。
今回は初回なのでこのあたりで終わりにしたいと思います。
都市圏には多くの定義がありますが、ここでは雇用都市圏としています。